「医療・介護-生活者の暮らしを豊かに」会合 資料考察その1
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以前、保健医療分野におけるICT活用推進懇談会についての記事を書きましたが、今回、「第1回未来投資会議構造改革徹底推進会合」の「医療・介護-生活者の暮らしを豊かに」会合のうち、厚生労働省提出資料をまとめていきたいと思います。
介護に関心がなければ見ることもない資料ですが、資料を読む限り、政策も着実と進んでいると思います。
厚生労働省提出資料より
「日本再興戦略 改訂2015」・「日本再興戦略 2016」に沿って医療等分野のICT化の取組を着実に推進とありました。
現行の取組
- 医療データのデジタル化・標準化(医療情報の利活用の基盤整備)
- 患者・現場をつなぐネットワーク化(医療情報の共有・連携)
- イノベーションを生み出すビックデータ化(医療情報の収集・分析)
さらなる取組(保健医療分野のICT活用推進懇談会)
さらに、厚生労働大臣の下に「保健医療分野のICT活用推進懇談会」を設置(平成27年11月)。患者・国民本位の医療等サービスの提供・持続可能な医療等システムの実現・産官学が一体となった研究開発や新規サービスの創出に向けた次世代型の医療情報の共通インフラやプラットフォームの在り方等について議論。
同懇談会提言(平成28年10月19日)を踏まえ、厚生労働省において提言内容の実現について検討
を進めていく。
取り組みについて
現行の主な取り組み1
医療データのデジタル化・標準化
このことにより、病院間での医療情報の共有が容易になります。
また、AI(人工知能)を活用することにより、
【むくみ→浮腫】
など、違う言葉でも同じ症状に変換し、分析が容易になります。
現行の主な取り組み2
患者・現場をつなぐネットワーク化(医療情報の共有・連携)
地域での医療介護連携や、医学研究を推進等するため、医療保険のオンライン資
格確認、医療等分野のIDの導入を図るとともに、地域医療情報連携ネットワーク
の普及を推進
とあります。簡単に説明すると、
マイナンバーカードを医療機関にて提示すると、本人が医療保険資格があるか、オンライン認証にて、確認ができます。
また、医療情報の共有化が可能になり、
病院、薬局、介護事業所、かかりつけ医の連携が容易になります。
結果、それぞれの事業所が職務により専念することができそうです。
しかし、この取り組みはまだ構築段階であり、実際に運用は2018年年度から段階的に行うようです。
現行の主な取組3
イノベーションを生み出すビックデータ化(医療情報の収集・分析)
様々なデータが収集されており、分析により、新しい技術、治療方法などの革新などの医療・介護の質の向上を推進されます。
さらなる取組として
- ICTの技術革新を徹底的に取り入れる。
- ICTの活用は、患者・国民にとって真に価値のあるものとなる必要がある。
- 「価値不在の情報化」から「患者・国民の価値主導」に切り替え。
- 患者・国民本位のオープンなインフラを整備し、患者・国民や医療機関等、産官学のデータ利活用を促進する。
そのために、
データの収集段階から、集積・分析・活用(出口)で使えるアウトカム志向のデータをつくる。
個人の健康なときから疾病・介護段階までの基本的な保健医療データを、その人中心に統合する。
産官学のさまざまなアクターがデータにアクセスして、保健医療データをビックデータとして活用することができるよう、保健医療データをオープンにする。
とあります。
重要なことですね。今後の為にこの分野には十分に予算を割いて欲しいと思います。
そして、介護における新・第3の矢と称して今後の取組もありました。
新・第三の矢
第一の矢として、「介護離職ゼロ」とあります。
この言葉はニュースでも度々取り上げられており、認知されてきているかと思われます。
介護職に退職する人が多い問題ではなく、他の職種の方が、家族の介護の為に離職せざるを得ない状況を改善するための目標です。
現状、社会保障の財源は殆どが税金です。
現役世代の方が介護の為に離職することは、それだけ収める税金も減る事になり、
また、介護職でない方が介護することによる肉体的、精神的に介護疲れが発生することもあります。
介護離職は、本人にとっても国の財源にとってもいいことはないと思います。
その為に、介護職がより適切なサービスを提供し、利用者の家族の負担を軽減する事が重要になると思います。
介護の職場の魅力向上の為に、
- 介護人材の処遇改善の推進
- 安定財源を確保しつつ、事業所におけるキャリアパスの形成に資する処遇改善を充実
人材育成・専門性確保を通じた良質なチームケアの実現
介護福祉士を中核とした適切な人材の組み合わせ、業務の類型化の推進、人材育成計画の作成等の制度的対応を検討
業務の生産性・効率性の向上
- 介護ロボット、ICT、AI、センサー、インカム、IoT、ノーリフティング等次世代型介護技術の活用促進、活用促進に向けた制度的対応を検討
- 文書のICT化の推進、行政が求める帳票等を含め文書量を半減
地域包括ケアシステムの推進の為に、
- 自立支援・介護予防の先進的取組を全国で実施
- 「良くなるための介護」(介護の重度化防止)の推進
- 介護基盤整備の着実な推進
以上を取り上げていました。
資料では書いていなく、私の私見ですが、
現状は、介護事業所はいかに介護報酬を得るかを意識しています。悪い事のようにも聞こえますが、
職員の給料は介護報酬からでます。この介護報酬が少ないと、給料も出せず、事業所の継続も難しくなります。
近年、介護報酬改定により、減額された訪問介護、デイサービス等の事業者の倒産も増えています。
2016年1-9月の倒産は年間最多の77件となっており、小規模事業者の倒産が増えました。
やみくもに介護報酬だけ上げてしまうと、事業者にとってはいい事ですが、年々膨らむ社会保障費がさらに膨らんでしまいます。
その為に、介護利用者を減らせるよう、介護予防、自立支援を推進しようとしています。
そこで浮いた財源を介護職に回せることが出来ればいいと期待します。
自立支援を行う事により、高齢者のQOLも向上しますので、
国の財政にとっても、利用者にとっても意味のある目標だと思います。
第二の矢として、地域包括ケアの深化に向けた新たな施策展開とあります。
地域包括ケアシステムは、高齢者等の多様なニーズに応え、自立し充実した地域生活の実現を目指すものと考えられています。
これまで、高齢者の為だけのサービス向上を推進していた事に対し、高齢者のみならず、地域で支援を必要とする方々の暮らしを支えられるよう、地域包括ケアを深化させていくことに変わってきています。
- 医療・介護の保険者機能を一層強化し、そのリーダーシップの下で、医療・介護の質の向上や予防等の取組を強力に推進。
- 地域コミュニティにおける「支え合い」の機能の充実や民間事業者による保険外サービスの育成・活用を推進。
- 医療分野等のイノベーションを促進する振興策を積極的に展開。また、公的サービスを補完する民間の活力・資金を積極活用(ソーシャルインパクトボンド の活用等)。
となっております。
介護報酬の為、民間、地域の協力が必要と捉えられます。
保険外サービスを活用することにより、介護サービスの保険料を減らしたい。ではその保険外サービスが誰が支払うのでしょう?もちろん利用者です。
結果、公的サービスが減る事になれば、保険外サービスが利用できないとなると、
利用者の周りの家族が介護の為、離職してしまう、「介護離職」になってしまう恐れもあります。
しかし、財政の問題もありますので、一概に否定は出来ませんが、難しい施策となっています。
もちろん、資料では踏まえているのだと思われます。
無駄を減らすために、保険者インセンティブ改革、イノベーション促進と民間活力の積極活用を新たに展開しようとしています。
それらを、第三の矢に織り込んでいます。
第三の矢として、イノベーション促進と民間活力の積極活用とあります。
次世代型介護技術により、介護の質・生産性の向上
医療系ベンチャーの振興による革新的創薬や治療法等の創出
多様な保険外サービス等のヘルスケア産業の健全育成・利活用の推進
ソーシャルインパクトボンドなど民間の活力・資金の活用
介護職が2人で行う職務を1人で行えるようになれば、1人分の人件費も浮きますし、
新しい創薬や治療方法で従来よりも安く治療ができるようになるかもしれません。
保険内サービスで過剰に発生しているものも現状ありますので、それらを保険外サービスで活用します。
ソーシャルインパクトボンドとは、官民連携のインパクト投資で、事業が成果を挙げた場合にのみ削減された行政コストに基づいて投資家に報酬が支払われる仕組みで、社会的コストを削減する事業が実施できれば、行政コストも削減されるうえ、投資家もリターンを受けることができる、うまくいけば双方にとっていい施策だと思います。
今後の目標について
今後の目標についてはこう記載されていました。
2015年~2017年(第6期介護保険事業計画)
「緊急対策に基づく、整備料の前倒し、上乗せ」
介護離職の観点も含めた介護サービスの把握方法等に関する調査の為、
調査研究事業の実施、調査方法の改善、第7期に向けた調査
標準化に向けた分析手法の検討、ケアマネジメントの先進事例の収集。分析、適切なケアマネジメント手法の策定。
高齢者の自立支援や介護予防に取り組む保険者等の好事例の全国展開
地域包括ケア「見える化」システムの設計、開発、運用
PDCAサイクルの強化、国や都道府県による市町村への横展開の支援、取組状況に応じた保険者及び都道府県へのインセンティブ付け等について関係審議会において検討、必要に応じて制度改正
国・都道府県による研修やアドバイザー派遣の全国展開に向けたガイドラインやカリキュラムの策定
国有地の利用推進、介護基盤整備の強力な推進
介護施設整備に係る国有地の活用
介護施設整備について、現場の意見を踏まえつつ、必要な措置を実施
2018年~2020年(第7期介護保険事業計画)
>第7期の手法の改善
新たな仕組みの施行
2021年~2023年(第8期介護保険事業計画)
引き続き、介護ニーズの的確な把握、介護基盤整備の着実な推進
第8期の手法の改善
介護ニーズ等に応じて介護基盤整備の在り方を検討
指標
2020年代初頭までに介護基盤の整備拡大量:50万人分以上(サービス付き高齢者向け住宅約2万人分を含む)
2020年代初頭までに介護施設・サービスを利用できないことを理由とする介護離職をなくす。要介護3以上の特養自宅待機者を解消する現在約15万人)
となっています。
まとめ
以降の資料は介護分野におけるロボットやICTの活用等についてでした。
これからの介護の社会の為、出来る限り、前倒しで進めて欲しいものですね。
これらはあくまで会議の資料ですので、全てが正しくなくてもいいと思います。
しっかり議論して、社会保障費を抑制しつつサービスの向上が実現できれば、より良い社会になると思います。
余談ですが、資料を見るにあたって、資料内のデザインに統一感がなく、見にくいです。どの部分を重要にしたいのかわかりづらく、みてて疲れてしまいます。
参考:日本経済再生本部